変わりたかった。
変われなかった。
忘れたかった思い出と生きていた。
忘れられない思い出に生きていた。
ずっとあの横顔が目に焼きついていた。
またその横顔を眺めたいと思っていた。
髪を切った。
「長い髪、似合うね」を断ち切りたかった。
首もとに涼しさを感じた。
夏なのにな、と思った。
私のことを覚えているかなんて
そんなことすら忘れてしまおうと思った。
そして前を向いた。
着信が来る。
『ごめん、また寝坊した
待ってて』
くすっ、と一人で笑う。
今年の夏こそいい夏にしてやる。
私はこの恋に生きたいのだ。
いや、決めた。この恋に生きてやる。
鼓動がうるさい胸に手を当てる。
玄関で服装を整えて、鏡の中の私に言う。
「変身!」