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鏡界輝譚スパークラー:プロフェッサーよ手を伸ばせ その③

「オヤ、起きたね?」
少年が目を覚ましたのと同時に、明晶が声をかけた。その目はモニタに向けられており、少年には完全に背を向けている。
「ここは……」
「ワタシの秘密基地だよ、少年。しかし君は幸運だったね。ワタシの親友が君を見つけてくれたおかげで、君は今辛うじて生きているわけだ。まあ無傷じゃ済まなかったけど」
「……? あの、あー、すんません。ちょっと、話についてけないんだけど……」
「んー? あー……」
椅子を回転させ、明晶は少年に向き直り、にたりと笑って彼を指差した。
「君が今、身体を支えているその右腕」
「え、…………わあ何だこれ!」
金属製の義腕は、少年の意思に従って通常の人体と変わらないほど自然に動作しており、それ故に少年も実際に視認するまで気付かなかったのだ。
「私の自作ギア……まあP.A.だね。細い螺旋状のパーツを何枚も、何重にも組み合わせ、その伸縮によって身長145㎝から185㎝までの身長の人間に対応した特製義肢、名前は特に無い。元々君のための品物じゃなかったけど……まあ味方は多い方が有利だしね」
「……ぎ、ぎし?」
「そう義肢」
「え……それじゃあこれ、え、僕のこれ、腕無くなってるんすか⁉」
「うん。カゲに浸蝕されてたからねぇ。それしか無かった」
「ま、マジか……あの、それはありがとうございます」
「良いの良いの。恩義さえ感じていてくれれば。ついでにもう一つ恩着せといてあげようか?」
「え、何ですか」
少年が問い返したのとほぼ同時に、屋外から破壊音が響いた。
「え、何⁉」
「お、来たか。ワタシの親友が」
荒々しい足音が近付いてきて、吉代が部屋に入り、気絶した少女を1人床に放り投げた。
「わぁ乱暴。駄目じゃない女の子を乱暴に扱っちゃ」
「入り口壊した。ちょっと何とかしてくる」
「あー……そういうこと。行ってらっしゃい」
吉代を見送ってから、明晶は呆然とする少年の前を通り、気絶した少女を抱き起こし、壁際に寄りかからせてから再び椅子の上に戻った。
「はい、恩その2」

  • 鏡界輝譚スパークラー
  • 蘇れ長編!
  • 突入時の3割くらいになっちゃった…
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