ドローンから聞こえる明晶の指示に従い、剛将と花は脱出のため走り続けた。しかしその足は目の前に現れた大型のカゲに妨げられて止まってしまう。
『お、なかなか大きいのが出たねぇ。君ら、こいつのことは知ってる?』
明晶の問いかけに答えたのは花だった。
「いいえ、初めて見る型です。STIで教えてもらった中にも、こんなのは無かったはずです」
『そっか、それならワタシが勝手に命名しよう。ソレの名前は“ハイドラ”だ』
『”ハイドラ”ぁ? ダゴンじゃ駄目なのか?』
吉代の反応に、明晶はケラケラと笑って答えた。
『だってダゴンの方はちょっと好きなんだもん。そのまま名前使うのは申し訳なくない?』
『知らん』
『っと、今はハイドラだったね。ハナちゃんは足止めを頑張って。ゴーショウくん、ドローンの下にケースがくっついてると思うんだよ。それを開けておくれ』
「あ、はい」
剛将がそれに従いケースを開けると、中には緩衝材に埋もれてガラス製のアンプルが数本並べられていた。
「これは?」
『まあざっくり言うと、光の力を濃縮した燃料だね。義腕の手の甲を開けて、アンプルを中に差し込んで。細い方から入れるんだよ』
「開けるってどうやって」
『開けーって念じたら開くから』
「……あ、本当だ」
アンプルを義腕に差し込むと、手の甲の機構は再び閉じ、鈑金が一瞬大きくほどけ、すぐに元の腕の形に落ち着いた。
『これから使う技は、光の力をかなり消耗する。君の光の力じゃそう気軽に使えるモノじゃないからねぇ。ついでに近接戦にもっていかなきゃならないから覚悟しておいて。さあハナちゃん、一度退いて』
「あ、はい」
花が銃撃を止めて剛将の陰に隠れ、それに続いて剛将はハイドラに向けて飛び出した。