紬の和服で有名な結城、交通の要衝・下館を過ぎると乗り換え駅の友部が近付いてくるが、途中単線区間のため行き違いの電車が遅れている影響でこちらも友部に5分遅れで到着した。
特急券を購入し,上りホームにやって来た勝田発の特急ときわ80号品川行きに乗り込む。
「暗くて何も見えんね」という嫁の一言に「昼間なら,綺麗な景色が見えんだけどな…実はこの区間ってのどかな田園風景の中に映る四季折々の姿が綺麗だからクセになるんだ。」と言って過去の大回りの車窓の写真を見せると「関東って滅多に来る機会ないけど、何度も来ればここまで綺麗な風景見れるのね」と返す嫁に呆れながらも「まぁ、大回りの制度を利用して四季折々の景色を堪能できるのは事実上近畿と関東しかないけど,こんな綺麗な風景は関東出身のイケメン男子に与えられた特権ってヤツかな。でもまあ,いつぞやの大災害の後に家族でとった行動が原因で地元じゃ村八分みたいになったから,それ以前から付き合いのあった相手か俺の過去を知らない人以外友達がいなかったし、まともな恋愛もしたことなくて,鉄道が幼馴染であり恋人であり,相思相愛の仲みたいなもんだがな」と言って笑うと「私は?」と寂しげに呟く嫁に「前世からの縁なんだから良いだろ」と返すと嫁は無言のまま頬をすり寄せてくる。
窓の外を見ると歩き慣れた我孫子駅のホームが見えている。「そろそろ降りないといけないから支度するぞ?続きは家でやろうな」と言って嫁を納得させて柏で下車してすぐに来た快速上野行きに乗り換える。
松戸を過ぎると江戸川を渡って東京都に入り、そこから先は中川、荒川と渡って北千住の3番線ホームに滑り込む。
10代になって初めて知った後に虜になり,青春の象徴となっている思い出の駅メロと言っても過言では無い常磐3-1番は国鉄車両の代から始まって平成を越えて令和の今もなお走り続ける北関東のエーススプリンター,E531系一強の代になった今でも鉄道ファンを喜ばせる下町の象徴となって鳴り続けている。