メタルヴマに似つかわしくない、煤けた無地のシャツ1枚のみを身に纏った幼い少女のような姿のそれは、今日も虚空に手を伸ばし、無意味な呻き声をあげていた。
「クリスチャン! クリスチャンどこー! おーいクリスチャン!」
「あぇ?」
呼び声に反応し、そちらに顔を向ける。両の眼球を抉り出されたメタルヴマが一人、見えない目できょろきょろと周囲を探りながら少しずつ近付いてきているのが見えたので、後頭部からひび割れ中ほどから折れた水晶柱を生やした少女のようなメタルヴマ、クリスタルは、手を振って呼び返した。
「ねこちゃん!」
「あ! よっしゃ聞こえた!」
猫耳風の突起が付いたキャスケット帽を被った盲目のメタルヴマはクリスタルに駆け寄り、額に輝くクリソベリル・キャッツアイの核でクリスチャンの顔を覗き込んだ。勿論その鉱石の目に、クリスタルの顔を確かめられるような視力は具わっていないのだが。
「ネコメちゃんが今日も来てやったぜークリスチャン。いつ殺されるかとビクビクしながら来てるんだ。感謝しろよー?」
「んー」
クリスタルの隣に腰を下ろし、ネコメも同じように空中に手を伸ばし始める。
「この辺? この辺で合ってる? 自分がどう動いてるのか目視できないのがキツイのよ」
「ぁんー」
クリスタルは曖昧に答え、虚空に透明な壁でもあるかのように両手で叩くような動作を始めた。
企画参加ありがとうございます。
早速ナニガシさんらしい始まり方、ここからどうなるか楽しみですね。