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Trans Far East Travelogue61

市ヶ谷の駅舎と俺の地元は対岸にあるとは言え我が母校の校歌にもあるように「古いゆかりの濠に沿う風爽やかな丘の上」にある。
改札口は入り口が吹き抜けになっている為、いつものように吹き込むそよ風に髪を靡かせながら嫁が一言「せっかくだし、貴方の地元歩きたいなぁ」と呟くのを聴いて「任せときな。って言うか、コースどうする?ここから歩くなら四谷か神楽坂のどちらかがオススメだよ。どちらも車の通りが多い道から一歩入った路地に建ち並ぶ飲食店の風景が良いんだ。まぁ,この時間じゃ呑み屋しか空いてないけど」と言うと嫁からの返事が来る前にセブ時代の親友から電話が来たので話を聞いてみると。神楽坂の本多横丁で、かつてセブの学校にいた同学年の関東男子4人のうち俺以外の3人が偶然同じ店で鉢合わせて呑んでいるので,俺も呑みに来ないかとの誘いだ。
そして,俺達2人も合流して見番横丁近くの店で5人で呑むことになった。
2人で飯田橋に向けて歩いていると「見番横丁ってどの辺?」と嫁が訊いてくるので「地元じゃ昭和の空気を色濃く残すことで有名な銭湯の熱海湯がある辺りさ。神楽坂は谷状になってるけど、お堀にかかる橋を渡って坂を上りきる手前で左に入るよ。そう言えば,アイツら昔は俺より先にダウンしてたから多分酒弱いと思うけど、もしかしたら強くなったかも知れないな。でも,俺たちに遠慮して合わせなくて良いから無理はするなよ」と返すと「やっぱり優しいね。外見はともかくこんなに良い旦那さんと一緒になれて幸せ」と嫁が囁く。
「俺もこんなに良い嫁さんと一緒になれて幸せだなぁ…でも,ここの公園で昔家族でやったみたいに今度は2人でできたらもっと楽しかっただろうに」と呟くと嫁が「何かできなくなったの?」と訊いてきたので「ここ、お濠の対岸の建物の夜景が水面越しに輝くだろ?それを見ながら昔は線香花火ができたんだけど今は禁止になったんだよ。中2の夏休みにここで家族で手持ち花火やってたのが懐かしい。でも,もうできねえんだよなぁ」と返す。
「この公園,昼間は観光客多そう」と言って嫁が呟くので「観光客は多いぞ。特に春先は桜が綺麗なんだ。そこの新見附橋から両側に咲き誇る満開の桜と電車がセットで写る写真で有名だね」と返すともう飯田橋の西口駅舎が見えてきた。
光輝く現代的な駅舎はさながら八重洲のようだ。

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