皆が思わずそちらの方を見ると、緑の長髪を切り揃えた黒いワンピース姿の人物がこちらに歩いてきていた。
「そんなに騒ぐんじゃありません」
品位がなっていませんよ、と緑髪の人物は諫める。
「…“エメラルド”様」
ゴシェナイトは慌てて背筋を正した。
「それにしてもルビーにサファイア」
何の用ですの?と“エメラルド”はルビーたちに尋ねる。
「またナワバリを奪いに…」
「いや、ナワバリじゃなくてこの子のことなんだけど」
ルビーはそう言って青緑色の髪のコドモを自分の前に立たせる。
「この子誰だか知ってる?」
記憶喪失なんだけどさ、とルビーは青緑色の髪のコドモの背中を押す。
「ふーん」
エメラルドは目の前に立つコドモの顔を覗き込む。
「…知らないわ」
「マジ?」
お前の一族の子じゃないの?とルビーに聞き返されて、エメラルドは本当よーと口を尖らせる。
「わたくしたちベリル一族の子じゃないわ」
そもそもベリル一族は背中に鉱石が生えるし、とエメラルドは続ける。