戦場に駆け付けたルチルの目に入ったのは、力無くへたり込む相棒の姿と、その数十m前方に立ちはだかる甲冑姿のメタルヴマだった。
「アメシスト!」
仲間の名を呼びながら戦線に飛び込み、ルチルは最大出力の水晶柱を敵に叩きつけた。
「うお、遅いよルチルクォーツ。私が半分無くなっちゃったじゃないか」
おどけて言うアメシストの両腕と左脚は根元から失われ、腹部も半分以上抉り抜かれている。
「すまない、遅くなった」
「いやごめんて、軽口よ軽口……実際早すぎるくらいだよ。しかしさっきの攻撃すごかったね。『針』ってより最早『柱』って感じだ」
「あれで斃れていてくれれば良いんだが……」
ルチルの言葉と同時に、地面に深々と突き刺さった水晶柱が爆ぜるように砕け、土煙の奥から抜き身の刀を引きずる甲冑姿のメタルヴマが現れた。
「出たな……トロイライト」
「気を付けなよ。“流星刀”は間合いを問わず、理不尽なほどの剛剣だ」
「ああ。あれだけの距離を余波が飛ぶんだからな……」
呟きながら、ルチルは無数の水晶針を自身の周囲に漂わせた。
青年、トロイライトが刀を振り上げると同時に、刀身に狙いを定めて水晶針を全て叩きつけ、斬撃を妨害する。刀は水晶針の威力に跳ね返されるが、その反動は斬撃の余波として前進し、ルチルの右腕とアメシストの髪を一束吹き飛ばした。
(な……⁉ 馬鹿な、完全に防いだはず……⁉ 横暴にも程がある……!)
「お、先にやり合ってた私と同じ反応してら」
アメシストがけらけらと揶揄うように笑った。
核が無事ならいくらでも再生するからねメタルヴマは…
脊椎もゆっくりだけど再生しそう。