「……はい、処置完了」
クォーツ族のナワバリの中央付近にある避難施設にて、ローズに首の傷を処置され、ネコメは患部をさすって微笑んだ。
「うんうん動く。ありがとローズのひと」
「言っておくけど、ダクト・テープで雑に貼っ繋いだだけだから、ちゃんと治るまでは無茶しないでね?」
「はーい」
生返事を返し、ネコメはすぐ傍でぼんやりとして座っていたクリスタルの隣に座った。
「クリスチャン、クリスチャン」
「ねこちゃん!」
「見て見てー、首直してもらった!」
「んにゃぁー」
「ここのみんなは優しいねェ」
「へぁん?」
「……なんでピンと来てないの? 身内でしょ?」
「にゃぁー……」
首を傾げて唸るクリスタルに疑問を覚えつつ、ネコメは額の核で周囲を見渡した。
「それよりさァ、この辺には『境界面』無いのかね?」
「ハハハ、訳の分からないものが避難所にそんな簡単にあったら困るなァ」
笑うローズの背後で、ネコメの視線が止まる。
「な、何だい急に私を見つめて……」
「クリスチャンこっち」
クリスタルの首の後ろを捕まえ、ネコメは自分の身体の方にクリスタルを引き寄せた。
「……あ」
ローズは二人にまだ無事な左の掌を向け、能力を発動する。ローズの身体が二人に引き寄せられるよう飛んでいき、衝突の勢いで3人はもつれ合ったまま更に転がった。
「たしか……ネコメの力は『危険』と『興味』を認識する能力。あの反応の仕方ってことは……」
ローズは直前まで自分がいた場所に目をやった。そこには、ローズを押し潰そうとしていたかのように岩石塊が突き刺さっていた。