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Trans Far East Travelogue70

休憩を終えて走り出すと、嫁が一言「信州って雰囲気良かね」と言うので「だろ?俺も信州好きで昔から何度も来てる。ただ、親父と違って俺は上田や松代といった北信よりも諏訪や高遠と言った東信・伊那地域が好き。特に、高遠城址公園の桜はとても綺麗だし、伊那名物のローメンは勿論,大好物の五平餅と言った旨いものも沢山ある。小6の移動教室で伊那の農家さんの所で稲刈りさせて貰った時から信州の食べ物は好きなんだよ。まぁ,ざざ虫やイナゴは今でも苦手だけどね」と返すとタイミング悪く会社の人事課長から電話が来る。
地方への異動の打診だったので少し落ち込んでいたが,温泉の諏訪,郷里の東京・新宿,桜が綺麗な高遠という俺が好きな3つの街にアクセスしやすい茅野へ異動ということで二つ返事でこのオファーを受けることにした。
その後嫁が何か歌って欲しいと言うので,折角だから皆も歌えるヤツにしようと暫く考え込んでいると後部座席の皆が信州を代表する名曲『信濃の国』の音源を流して合唱を始め,嫁もつられて口パクで歌い始める。
今度は嫁が『いざ行け若鷹軍団』を歌うので、各々が応援するプロ野球チームの球団歌を歌うことになって完全にカラオケムードになり,見事に休憩予定地で夜景と月が綺麗な姨捨も山葵で有名な安曇野もすっ飛ばして気付いたら松本まであと1キロの標識が出るまで南下していた。
そして,夕食を摂る為に松本で一度高速を降りて駅ビルの店で山賊焼きを堪能し,もう一度高速に戻って諏訪湖SAの温泉に入った。
風呂上がりにテラスに出て諏訪に程近い山梨の銘菓信玄餅をアレンジしたクレープアイスを食べながら眼下の夜景を見ていると,来た時とは打って変わって雲一つない夜空に北斗七星と月が湖と湖畔の街を照らしていることに気付く。
嫁がそばに来て「なんか,2人でパリに行った時思い出す…あの時も空から見た街の夜景こんな感じやったよね」と言うので「でも,あの時と今日とでは決定的に違うことがある。あの時は移動日で試合が無かったのに対し,今日の試合は言葉にしたく無いくらい酷い負け。」と言うと「もう,貴方ったら。プロ野球か旅か私のことしか頭に無いんでしょう」と嫁が言うので「当たり前だろ?これからの俺を支える、どれか一つが欠けてはいけない三要素なんだから」と言って笑って紙に包まれた木の棒を差し出す。
あと3時間弱で港に着き,すぐに船出する。

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