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Trans Far East Travelogue73

幸いにも車がキャンピングカーであったため,後部座席の構造が向かい合わせのソファーになっており、背もたれにクッションを立てかけた座椅子を二脚通路との間に挟んで出来上がった簡易ベッドができた。
座椅子の1番運転席よりの部分に俺が座り,嫁を膝枕する格好で寝かせて後ろの2段ベッドから毛布を何枚か拝借し,嫁にかけてそのまま無意識のうちに手を握っていると,暫くして嫁が目を覚ました。
「これ,全部貴方がやってくれたの?」と訊くので「まぁな。でも,姉妹いたこと無いからどうやれば良いか分からなくて取り敢えずできることやっただけさ。素人対応だったし無理させてしまってすまない」と謝ると「謝るのはウチの方や。KLからタイ方面抜けた時の列車で貴方が言ってたの、ウチ覚えてるもん。『俺の憧れのドライブデートというのは,俺は免許無いけど大体の地図は頭に入ってるからパートナーが運転して俺が助手席でサポートすることさ』ってね。それなのに,貴方が大好きな地元離れることになりそうで寂しそうにしてたから,せめて船に乗るまではって思ってたんやけど,港に着く前にこんなことなって憧れの舞台を潰してしもて…でも,こんな時でもそばにいてくれる素敵な人と結ばれてウチ,本当に幸せや」と嫁が泣きながら返すので「お前ってヤツは…ペテルブルグで俺が何て言ったか忘れたのかよ」と言って頭を抱える。
すると嫁が「およそ一千日続いた飢餓地獄ではあったが最後まで陥落しなかったレニングラードの攻防戦になぞらえて『俺はどれだけ大変な状況でも,千日経とうと何万日経とうと,一生添い遂げるだけさ』って言ってたの,本気やったの?」と訊くので「当たり前だろ?そうでなくちゃ君と結婚してないし,俺の大好物も絶対あげないから」と真面目な顔して返すと嫁も本気な表情になり「新高山より高く,駿河湾より深いもの何か知ってる?」と訊くので「答えは簡単。君への愛だな。でも,それを上回るのは俺のカッコよさ」と返してその場を和ませると「今までやったら『鏡見ろ』とか『寝言は寝て言え』って思ってたけど、見直しちゃった」と笑いながら返す。
すると,他に後ろの方の仲間達から「よくもまぁ,年頃の男の子が恥ずかしいと思う身体のコンプレックスになりそうなものを全て兼ね備えた人に嫁が来たよな。大切にしてやれよ」とヤジが来てまた賑やかになる。

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