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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 17.ヨウコ ⑤

「あら?」
わたしがそこまで考えた所で、聞き覚えのある声が耳に入った。
思わず顔を上げると、目の前には背の高い髪を複雑に結った少女が目に入った。
「暫くぶりじゃない」
少女はそう言って微笑む。
わたしは急な事にびっくりして、彼女が誰だか分からなくなった。
「え、えーとえーと…稲荷(いなり)さん?」
やっとの事で思い出した名前を口にすると、少女は覚えてくれていたのねと目を細めた。
「何だかあなたが難しい顔をしてたから、つい話しかけちゃった」
稲荷さんはそう言いながらわたしの傍に座る。
「何か考え事?」
稲荷さんがそう聞いてきたので、わたしはまぁ…そうですと答える。
「あらそう」
良かったらわたしが聞くから、話してくれない?と稲荷さんは尋ねる。
「あーでも…」
「良いから話しなさんな」
戸惑うわたしに対して、稲荷さんはにこりと笑いかける。
有無を言わせぬその笑顔に、わたしはこれまでの経緯を話す事にした。

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