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Trans Far East Travelogue78

まだ日が昇る少し前,興奮して眠れなかったのか嫁がカーテンを開けて外の景色を眺めている。
その時に入って来た街明かりに起こされる形で俺も目覚め,徐に嫁の隣に座ると嫁が指さしで「あの前に街,見えるでしょ」と言うのでその方向に目を向けると確かに街が見え,しかも高速道路のようなものが海に突き出る様子まで見えている。
今度は俺が一言「これが平安貴族の左遷とか、幕末の西洋列強の軍艦からの砲撃と言った歴史の悲劇の舞台,関門海峡か…俺も都落ちしたのか」と自嘲気味に呟くと何かを察したのか嫁は苦笑いだ。
それから暫くすると船内放送が流れ,博多にはあと1時間ほどで到着すること、出港時間は予定より遅れて明日の朝8時,その次の港は韓国の為出国審査の関係上その1時間前には港に戻るようにといったアナウンスがあった。
その放送が流れ終わるまでに嫁は着替えて荷物を持ち,俺を促してデッキに向かって駆け出すので俺も後を追い、俺が甲板に着くと同時に空が白金になり始め,博多湾の入り口に当たる志賀島・海の中道が黄金色に照らされているのを見た嫁はハッキリと「ただいま」と呟き,俺が「長旅お疲れ様。漸くそっちも帰郷したんだよな」と声をかけると嫁が笑顔で「今度はウチがリードするけん,信じてついて来てや」と言うので「分かった。ど真ん中ストレートで行くからな」と言って俺も笑い,揃って手を繋いで下船した。
ここからは嫁が考案した秘密のルートに沿うことになる。

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