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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 17.ヨウコ ⑨

稲荷さんに手を引かれて約30分。
わたし達はバスに乗った後、市の中心部から大分離れた所を歩いていた。
住宅地と言えば住宅地だが、古い建物がかなり目立つし、所々小さな畑も見える。
寿々谷駅前に比べればかなり田舎だった。
「…稲荷さん、一体どこに向かっているんですか?」
「ふふふ、秘密~」
さっきから何度も繰り返している会話を繰り返しつつわたし達が歩いていると、不意に稲荷さんが立ち止まった。
「?」
彼女が目を向けた方を見ると、そこそこ立派な日本家屋が建っていた。
「ここは…」
「日暮邸よ」
わたしの言葉を遮るように稲荷さんは呟く。
「…え?」
「この辺りで1番大きい家だから、”邸”って呼ばれてるの」
稲荷さんはそう説明するが、いやそうじゃなくてとわたしは突っ込む。
「”日暮”って事は…ここ、師郎ン家?」
わたしはそう尋ねるが、稲荷さんは気にせず一軒家の敷地内に入った。
そして家のインターホンを押した。

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