コンビニ店員のおざなりな「ありがとうございました」を背中に受けながら、ポリ袋を片手に自動ドアをくぐる。
時刻は午前1時過ぎ。買い物の内容は、この夜を生き抜くための頼れる相棒、355ml入りのエナジードリンクが2本とプレッツェル菓子が1箱。占めて700円ほど。
煙草をやるような『本物』には近づけないから、代わりに箱を開けてプレッツェル菓子を1本咥えてかっこつけてみせ、誰もいない住宅街を、周囲を見回しながらのんびりと練り歩く。
まだまだ夜はこれからだってのに、周りの窓から漏れる光は1つも無くて、寂しさと街を独り占めしているような不思議な優越感が複雑に入り交じって、胸の奥から自然と溢れ出す感情に正気を失いそうになる。
この通りに入ってから4つ目の十字路をスルーしてから、今日は次に通りかかった十字路は左に曲がってみようと決める。
昼間のうちに外に出るのは怖いけど……いや夜は夜でヤバい人とか暗いのとか怖いんだけど、人目が無いこのくらいの時間の方がずっと出歩きやすい。学校に行けない分、このくらいの運動はしなくっちゃね。
そんなことをぼんやり考えながら、エナジードリンクの1本目を開栓しつつ十字路を左折すると、そっちの道から飛び出してきた誰かと勢いよくぶつかってしまった。おかげでまだ口も付けてないエナジードリンクは全部、アスファルトの上にこぼれてしまった。