港に戻り船に戻ろうとするとターミナルの中には日英韓の三カ国語で国際線ターミナルの出発口を意味する「국제선 출발/International Departure/国際線出発」と書かれた看板が立っており,いよいよ海外へ行くことを実感させられる。
出国審査を済ませて船に戻ると甲板で待っていた日本支部長(釧路勤務)が「済州は中学の時以来だろ?楽しみか?」と声をかけてくれたので「楽しみですが,この滞在時間では日本や他のアジア諸国の人々に島の魅力を伝えるには時間足りませんよ」と笑って返すと「麗水と順天の滞在時間を代わりに長くしてるし,運転手は手配してある。九州にも留学経験のある人だから標準語も福岡弁にも堪能で奥さんも楽しめるだろうな」と返って来たので念のため担当ドライバーの名前と顔写真が載った書類を見せて貰うと,母方の従兄で思わず「ウェ?(「なんで?」という意味)」と呟くと群山支社に異動になった韓国人の同期が事情を説明してくれたが韓国語に堪能な人は俺以外におらず俺が全部和訳する羽目になり,あまりにも言葉が長いので全て翻訳し終えた後「ネプダミノムマナ。ハングゲソン,ヒョンハンテマッキジャ(『俺の負担が重すぎる。韓国では兄さんに任せよう』という意味で,長幼の序に厳しい儒教思想が伝統的に根強い韓国では学校の先輩は勿論,自分の従兄弟姉妹や結婚相手の兄弟姉妹の結婚相手でも相手が歳上なら『お兄さん』や『お姉さん』と呼ぶ習慣がある)」と冗談めかして話を締めようとすると同期は「タンニョニクレヤジ。ノガトゥンサラメマッキミョン,ウリケウェギワンジョニマンへ(当然そうしないとな。お前みたいな人に任せたら俺達の計画が完全にダメになる)」と真剣に応えるので苦笑いを浮かべ,嫁は「やっぱりウチの旦那さんは自慢の旦那さんやな」と目を輝かせているが「殆ど俺をネタにした笑い話だけど,韓国には『親しき仲には礼儀なし』という諺があるし俺が日本人だからこれくらいはよくあるさ。人によってはもっと口汚く罵倒するから」と笑って返す。
出港の汽笛が鳴り響き,全速力で航海すると玄界灘が光っている。
※韓国語には日本語にない子音の発音の他,単語の音が繋がって文字の表記と発音が異なるという特徴があるので、韓国語は原則口語での発音をカタカナ表記に置き換えて表記しています。