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ビーバー

 二年ぶりにビーバーに会いに行った。ビーバーはダムをつくっていた。結婚するんだ。と、ビーバーは言った。
「君はまだあの女と?」
 ビーバーは流されぬよう、ダムの枝につかまりながら言った。
「続いてるよ」
「あんな腹黒女」
「腹黒どころかどす黒だ」
「どこがいい?」
「まあまあかわいい……ただ問題なのは、本人はすごいかわいいと思ってることだ」
 ビーバーは、はははと笑い。今夜は飲もうや。と言った。
「ちょっとアンタ」
 背後から、声がした。ビーバーの彼女らしきビーバーが立っていた。彼女ビーバーだ。彼女ビーバーは俺をちらっと見てから、ビーバー(彼氏ビーバーだ)に、今日はお正月の買い出しに行くってメールしたでしょ。と、ややいらついた口調で言った。
 ビーバー(彼氏ビーバー。べつに書かなくてもわかるか)はあわてて携帯を取り出し、メールを確認してから(確認したふりかもしれない)、悲しそうな表情になり、すまなそうな表情を俺に向けた。
 俺は黙ってうなずき、「じゃあ、また」とかなんとか言ってから駐車場に向かった。
 車に乗り、エンジンを始動させてから、彼女からメールが来ていたことに気づいた。そういえば正月、彼女の実家に行く予定だったことを思い出した。
 俺は携帯の電源を切り、車を走らせながら、ビーバーはまだ、ガラケーなんだな。ぼそり、つぶやいた。

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