「こんな話を知ってるかい?」
学校からの帰り、怪談好きの幼馴染がまた性懲りも無く話しかけてきた。こいつがこの切り出し方をするときは、大抵怪談を語るんだ。
「いや知らん」
「聞いても無いのに……」
「興味無ェんだよ」
「そう言わずにさ」
渋々、話を聞いてやることにする。別に怪談が好きなわけじゃ無いが、こいつの語りはなんだかんだで聞いてて心地が良い。
「通称『四つ辻』。高校の近くに、人工林あるでしょ? ほら、林道が整備されてる」
「ああ……あるな」
「そこに一か所だけ、林道2本が交差した十字路があるんだ」
「……あったっけ?」
「あるんだよぅ。で、そこに夜中の2時に行くと、ちょっと怖……面白いことが起きるらしいんだ」
「怖いって言いかけたの隠しきれてないぞ」
「一緒に行こ?」
「嫌だ」
「そう言わずにさぁ。ほら、何なら昼の2時でも良いから! 次の土曜! 午前授業の後!」
「……何を出せる?」
「ダッツ2個でどうだ」
「いらん。……分かった。行ってやるよ」
「やったっ。約束だからね、絶対だからね、逃げないでよ?」
あいつは心底楽しそうにまくし立て、怪しい笑みを浮かべて見せた。