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白蛾造物昼下 前

とある大学の構内にて。
レンガ造りの年季が入ってそうな建物の一室で、1人の老女が椅子に座って机の上の書類に目を通している。
老女は白髪が多く髪は銀に近い色を呈しており、老眼鏡をかけているためだいぶ年齢を感じられたが、その瞳だけは鋭かった。
「…」
老女は暫く書類を眺めていたが、不意に顔を上げて部屋の開きかけの扉を見た。
「いつまで隠れているんだい」
ピスケス、と老女は扉に向かって声をかける。
「うふふ」
気付いてたのねと言いながら、青い長髪に白いワンピースを着たコドモが扉の陰から室内に入ってきた。
「気付かない訳がないじゃないか」
一体何年アンタと付き合ってるんだい、と老女はムスッとした顔をする。
「ふふふ」
ちょっとお取り込み中かと思って、とピスケスは笑った。
「…なに」
別に、仕事中に入ってきたってアタシは怒らないさと老女は書類に再度目を落とす。
「ふーん」
ピスケスは静かに頷いた。
「…それで、アタシの仕事場に来たってことはなにか用でもあるのかい?」
老女が書類を見ながら呟くと、あら、察しが早いわねとピスケスは驚く。
「まぁ、いつものことだからね」
老女はそう言って書類をテーブルの上に置いた。
「…それで、なんの用かい」
老女は鋭い目をピスケスに向ける。

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