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視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その①

昔から、自分には霊感体質があった。所謂『見える人』ってやつ。幽霊なのかお化けなのかもっと別の何かなのか、明らかにこの世のものでは無い何か。そういうモノが見えるし、そういうモノが居る場所では寒気というか嫌な予感みたいなものを感じる質だった。

そして今日も。

目の前に現れたのは、骨みたいに細い体つきの、背丈数mはある人影。まるで夜闇を凝縮したように真っ暗な、文字通りの『影』。
大学の講義が遅くまであったせいで、帰りが日没後になったのがマズかった。
人影は帰り道になっている路地を塞ぐように、四つん這いの姿勢でこちらを伺っている。眼があるようには見えないが、多分目も合っているんだろう。
こういうモノに遭遇したら見えていないふりをするのが良いというが、この状況じゃもう手遅れだ。人影は唯一存在する顔の部位の、大きく裂けた口をニタリと歪ませ、手を地面に這わせながら少しずつこちらへ近付いてきた。
こういう状況を『蛇に睨まれた蛙』っていうんだろう。逃げなきゃいけないのは分かっているのに、足が竦んで身動きが取れない。

  • 見える世界を超えて
  • 少し前に書いた設定のあれです
  • 反映されろ……されろ!
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