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視える世界を超えて エピソード1:鬼子 その⑥

種枚さんは着ていたパーカーを脱ぎ、素早く腰に巻きながら倒れている人影に近付いて行った。……ところでこの人、パーカーの下に、薄手とはいえもう1枚パーカー着てる……。

そして人影の頭を掴んで持ち上げ、軽く投げ上げるように浮かせてから顎に強烈なアッパーカットを決め、その身体を強引に起き上がらせた。
更に深く沈み込むように膝を折り曲げ、一気に跳躍して人影の首を殴りつける。それによって人影は勢い良く回転し、仰向けに倒れた。
「…………よし、と。首は獲った」
こちらに振り向いた彼女の手の上には、たしかにあの人影の首から上だけが載っていた。
「多分これで死ぬでしょ。大体の生き物は首を捥がれると死ぬ」
「いや……駄目っぽいです」
自分が指差す先、種枚さんの背後では、両腕と頭部を捥がれ、致命傷を受けたはずのあの人影が、再び起き上がろうともがいていた。
「あェ?」
間抜けな声をあげながら振り向く、その瞬間ちらっと見えた種枚さんの表情。
すごく凶悪な笑みを浮かべていて正直あの人影より怖かった。

  • 視える世界を超えて
  • オバケは生き物。
  • 二重パーカーは何かと便利で良いぞ
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