種枚さんとの再会は、あの人影との遭遇からちょうど1週間後のことだった。
この日もやはり遅くまで講義があったせいで、すっかり暗くなった帰り道を急ぎ足で行くことになってしまった。
先週のことがあったので、今日は少し遠回りになるけど、できるだけ大きくて人や車の通りも多い道を進む。
ふと、車道を挟んで自分の歩いているのと反対側の歩道に視線をくれると、見覚えのあるパーカー姿がいた。フードで顔は隠れているけど、オーバーサイズのパーカーと、その裾から伸びるハーフパンツと素足はあまりに特徴的で、間違えるはずも無かった。種枚さんだ。
命の恩人なわけだし、声をかけようかとも思ったけれど、道路を挟んだ状態で声をかけたところで、何かできるわけでも無い。
そんなことを考えているうちに、不意に1台の大型トラックが通り過ぎ、種枚さんの姿が一瞬隠れてしまった。トラックはすぐに行ってしまったけど、その後、向こうの歩道に彼女の姿は無かった。代わりに、
「やァ君、先週ぶり。元気そうで良かったよ」
いつの間にか背後に回り込んでいた種枚さんが、気安そうに肩を抱きながら話しかけてきた。