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視える世界を超えて エピソード2:鎌鼬 その②

「えっと、お久しぶりです、種枚さん。この間はお世話になりました」
「良いの良いの、気にしないで……っと」
前からやって来た自転車を、種枚さんに手を引かれて回避する。
「そうだ、君、聞きたいことがあるんだけど良いかね?」
「え、はい、良いですけど……」
「よしよし、まずはこれを見てほしい」
言いながら彼女がパーカーのポケットから取り出したのは、少し折り目のついた写真だった。中学校か高校の制服を着た、快活そうな少年の写真だ。
「見た?」
「見ました」
「見覚えある?」
「無いです。人探しですか?」
「まあね。知らないなら別に良いよ」
写真を再びポケットに仕舞いながら、種枚さんは答えた。
「あの、種枚さん。その人探し、手伝いましょうか?」
立ち去ろうとする彼女の背中に問いかける。彼女は足を止め、こちらに振り向いた。その顔は先週あの人影に見せた悍ましいものとは違う、ただ純粋な喜びを示す笑顔だった。

  • 視える世界を超えて
  • まあこの少年がキーよ
  • やっぱ名前忘れてるよな……?
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