陽当たりの良い縁側に座っていたのは、長髪の、着物姿の老婆。
老婆は軽く会釈をした。
手には、小ぶりな壺が一つ。
桜音は声をかけた。
「何時も有難う御座います、少々お待ちください。今、お茶を淹れますので...。」
老婆はニコニコと尋ねた。
「有難う、体調は如何だい?」
「ええ。大丈夫です、お陰様で。」
桜音はお茶を淹れる為に台所へ向かった。
老婆の正体は、『砂かけ婆』である。
月に数度、薬や仕事用の砂を届けに来てくれるのだ。
光は昔、彼女の後輩だったらしく、未だに「姐さん」呼びが抜けない。