「ここは常人が多数派の環境よ」
こんな所でソレを使わない方がいいわ、と論手 乙女は続ける。
「あなたにとっても、常人にとっても、いい結果にならない」
だからやめなさいと論手 乙女は腕を組んだ。
「…」
ボクはつい黙り込む。
確かにコイツの言う通りだ。
こんな所で異能力を使い、具象体を使って暴れるなんて、よくよく考えたら危険すぎる。
それに、ボクらにとって“異能力の秘匿”は暗黙の了解だ。
これを破れば何が起こるか…
そうこう考えている内に、チャイムが鳴った。
周りの生徒達は一斉に着席し、程なくして担任も教室に入ってきた。
「きりーつ」
級長の掛け声でバタバタと皆が立ち上がる。
「…滋賀さん、論手さんもこっち向いて」
担任にこちらを向いていないことに気付かれたのか、ボクらが名指しで注意される。
ちぇっとボクは心の中で舌打ちしながら、先生が立つ教卓の方を向いた。
そして1日が始まった。
〈番外編 死霊使いと妖精王 おわり〉