「にしても今日はなんか大変だったな…」
ヴィオラが身体を伸ばしながら呟くと、ニトがコーヒーを淹れながら思い出したように言った。
「あ、そうだお遣い行ってきてくれる?」
「えっ…な、え?まってもう夜…」
「行ってきてくれる?」
「…はい(圧を感じるなぁ)」
ヴィオラがしぶしぶ受け取って答えると、ニトは眷属の狸を呼び寄せて鞄に変化させた。
「遠いけど、お願いね」
ニトに出された指示は複雑だった。少なくともヴィオラには難解だった。しかも都市部から離れた慣れない森に入ったせいで、池に落ちたり熊に追いまわされたりと散々だった。
「はぁー…」
すっかり疲弊して目の前の建物の扉を開けると、ふわりと甘い匂いがした。
「いらっしゃいませ」
ヴィオラが顔を上げると、三つ編みでスーツ姿の女の人がいた。
「お嬢さん、ここに来るのは初めて?」
「え…あ、はい」
「迷ったの?」
「いや…あっ!そうそう!ニト様のお遣いで…」
「そう。全く…人使いの荒さは変わってないな」
彼女はため息をついた。
To be continued…