「さて、怖がらせてしまったお詫びをしなくちゃねェ……」
「いや別に、そんなに気にしなくても……」
「『あれ』の直後にそのフォローできるの、君だいぶ大人物だよね?」
「怖がるより種枚さんへの疑問が深まったもので……」
あの眼のことといい、周囲が凍結するほどの低体温といい、ブロック塀を破壊できるほどの身体能力といい、彼女は本当に人間なんだろうか?
「さて、君への詫びだけど」
「あっはい」
「君に『身の守り方』を教えてやろうじゃないか」
「身の守り方、ですか。護身術みたいな?」
「いいやァ?」
種枚さんがニタリと笑って答え、空中を素早く掴むような動作をしてみせた。
「化け物共を追っ払う方法さ」
手の中のものを、もう片手で摘んで取り出す。それは1匹のハエだった。
「せっかくだし、実践してあげようか。霊感を使わずに、奴らを攻める方法」