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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その②

自分が住んでいる町には、3か所鉄道の駅がある。町名がそのまま駅名になった駅、『東』を冠する駅、『中央』と後ろにつく駅。そのうちの一つ、役所に最も近い位置にある『中央』の駅は周囲の施設の充実から人の出入りも多く、休日であったためか待ち合わせの30分前という早い時間でも駅前広場はそれなりに混雑していた。
この中で、決して背が高いわけでは無い種枚さんを探すのは苦労するかとも思ったが、その心配は杞憂に終わった。
不自然に人が避けて通る真ん中で、フードを深く被ってただ立っていた種枚さんに、恐る恐る近付いて行くと、彼女の方もすぐに気付いたようで姿が消えたと思ったら次の瞬間には自分の背後にいた。彼女のこの移動法にもいい加減慣れてきた。
「やァ、随分早かったじゃないか」
「ええまあ、待ち合わせには早く来る性分でして」
答えながら彼女の足元を見ると、今日は珍しくビーチサンダルを履いていた。この人が履物を履いているところなんて初めて見た。
「今日は裸足じゃ無いんですね」
「流石に公共交通機関でまで、ってのはねぇ……」
いつもその気遣いをしてください、という言葉は一瞬悩んだ末に飲み込むことにした。

  • 視える世界を超えて
  • 種枚さんチーバより背ぇ低いんだよな……
  • 千葉の適応力が高い
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