窓から光が差し込む朝。小さな木製の椅子に、筆舌に尽くしがたい、人間離れした容姿の美人がお上品に腰を下ろしていた。
「ふぅ…」
ため息をつき、暫くうとうとしてから窓を開ける。朝はいつもそうだ。低血圧なので寝起きが悪い。彼_或いは彼女の名は、ニト。魔術師だ。
「うーん…よく寝た」
誰に言うでもなく呟くと、
「ニトーーっ!!おきろばかぁ!」
ニトの耳を刺すような大声が響いた。幼い子供特有の甲高い声だ。
「朝から元気だな…自重してくれるとありがたいんだけど」
声の主はニトの唯一の同居人_ロマだ。ロマは永遠に幼い、という呪いをかけられた少年で、本当はニトよりも年上…のはずだが。
「はやく!はらへったぞー!」
「はいはい今行くね」
ニトは重い腰を上げた。