「あの手前にいる方がかすみちゃん」
それで…と夏緒は急に真顔になる。
「奧にいる“あいつ”が、ナハツェーラー」
夏緒がそう言うと、蛍はナハツェーラー?と首を傾げる。
「そう、アイツはナハツェーラー」
他のみんなは“ナツィ”って呼んでるんだけどね、と慌てたように露夏が補足する。
「そうなの?」
蛍は不思議そうに首を傾げるが、露夏はまぁなと笑うだけだった。
「それはそうとしてだけど、蛍」
お前、今1人か?と露夏は屈んで尋ねる。
「うん」
そうだけど、と蛍は答える。
「父さんや母さんは?」
何気なく露夏が尋ねると、蛍はそう言えば…と
辺りを見回す。
「ママ、いなくなってる」
「え」
蛍の言葉に露夏はポカンとする。
「母さんがいないって…」
ヤバくね?と露夏は呟く。