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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その④

少女が種枚さんから離れて、かなりの距離を取ってこちらに向き直った。
「……おい君、5歩以上下がった方が良い」
ビーチサンダルを脱ぎ捨てながら種枚さんが私に言ってきた。それに従って、念のため10歩ほど下がる。
直後、地面に巨大な穴が開き、種枚さんと少女は穴の底に落下していった。
「ありゃ、遅刻しちまったか」
聞き覚えのあるその声に振り返ると、鎌鼬くんが自分の背後から穴の底を覗き込んでいた。
「あ、どもッス」
「鎌鼬くん、ひさしぶり」
「ッス」
「この穴、何が起きて……?」
「あの子、師匠は犬神ちゃんって呼んでるんですけどね。あの子は所謂『犬神憑き』の家系の出なんですよ」
「……それが、この穴とどう関係が?」
「それは俺にも分からないけど、どうもあの子は『土砂や岩石を操る』力を持ってるみたいなんですよ」
「な、なるほど……」
再び穴の底に目をやる。しかし、二人の姿は見えなかった。2人の上方に、それまで穴のあった場所を埋めていた土砂が塊状に集まって浮かんでいたためだ。
「あ、もうちょい離れた方が良いですよ」
「えっ」
鎌鼬くんに引きずられるように下がって数秒後、穴から途轍もない破壊音と振動、土煙が上がってきた。

  • 視える世界を超えて
  • どう関係しているかは追々
  • 鎌鼬くんは野暮用でちょっぴり遅れた
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