6運命 先生以外の集落の皆は、「運命」と言う言葉をよく口にした。集落に流れ着いた時も、「これが彼の運命なのだ」とか、「この事故すら彼の運命なのだ」 と散々言われたらしい。 そして。俺はその運命のことごとくを否定してきた。 熱を出した時に、「このまま死ぬ、それが運命なのだ」とおばさんに言われたが、翌日にはケロッとしていたし、怪我をした時も「痕は残る、それが運命なのだ」と言われたが、痕は残っていない。 まぁ、この程度のことを運命と呼ぶ彼等も彼等なのかもしれないが。