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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その⑤

時間を僅かに遡り、大穴の底。
犬神の力によって突如発生した落下に、種枚は即座に対応し、受け身を取ることで無傷で着地していた。
「じゃあキノコちゃん! いつも通りのルールね!」
「あァ、互いに全力で1発ずつ。押し通せた方の勝ち」
犬神に答えながら、種枚はパーカーを脱いで腰に巻き直した。
「さあ来な、犬神ちゃん。真ッ正面からブチ抜いてやる」
ファイティングポーズをとる種枚に対し、犬神はニィ、と笑って煽り返した。
「キノコちゃんみたいなパワーのある子はさぁ、こんな簡単な事実をついつい忘れちゃうんだ」
2人の頭上を覆っていた土砂の塊が、より密度を増して凝縮される。
「良い? キノコちゃん。……『重い』は『強い』なんだよ」
上空の土砂塊を制御するため上空に向けていた手を、勢い良く振り下ろす。
それに従って、土砂塊も種枚の頭上に向けて高速で落下し始めた。
「……分かってるさ、そのくらい」
対する種枚は呟き、体勢を変えた。左脚を前、右脚を後ろに半身に立ち腰を落とし、五指を僅かに曲げた右腕を大きく引き、左腕は身体の前方で肘を直角に曲げ、地面に対して水平に構える。
「【惨輪爪】」
そして土砂塊との距離が1mを切ったのとほぼ同時に、右足で強く踏み切り、左足を軸に高速で回転し始めた。
回転の速度と形状は、遠心力で自然と伸びた両手の先、計10本の鋭く伸びた爪を起点として、破壊力を生じた。更に彼女の放つ純粋な殺意が乗ることで攻撃の威力は遠心力に乗って周囲広範に伝播し、範囲的な破壊を瞬時に発生させ、その余波で頭上に迫っていた土砂塊をも砕き飛ばした。

  • 視える世界を超えて
  • 随分と久しぶりにこっちを更新するなァ
  • バトル物あるある:デカい重いが軽視されがち
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