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視える世界を越えて エピソード5:犬神 その⑥

土煙が止んで数分、固唾を飲んで見守っていると、種枚さんがあの少女を背負って穴の外まで跳び上がってきた。
「まけたぁー」
種枚さんの背中で満足げにそう言う少女……犬神ちゃんだったか。
「勝ったー」
口調を合わせるように言う種枚さん。
「でも思いっきりぶつかり合えて楽しかったー。まんぞく」
「私もだよ犬神ちゃん。良いガス抜きになった」
自分達の前まで和やかな雰囲気で歩いて来てから、犬神ちゃんが自分から種枚さんの背中を下りた。そのまま種枚さんの正面に回り、右手の人差し指を突き付ける。
「今日はありがとね、キノコちゃん。次は負けないから、覚悟しておいてね?」
「ああ、期待してるよ」
種枚さんはニタリと笑って答え、犬神ちゃんの指に彼女自身の人差し指を軽く突き合わせた。

「なァ、君、あの子に何を見た?」
駅までの帰り道、不意に種枚さんが話しかけてきた。
「はい?」
「『視えて』いたろ? 何が憑いていた?」
「…………ああ」
そう言われてようやく思い出した。鎌鼬くんにも聞いたが、あの子に憑いていたものはとても「犬神」とは思えなかった。
「そうですね…………何か、何て言うんでしょう……。肩に、その……モグラ? みたいなのが」
「それが『犬神』だよ。あの子は犬神憑きなんだ。土や岩を操るあの力も、どうもそれ由来みたいだ」
鎌鼬くんから既に聞いている、というのは言わないでおく。

  • 視える世界を超えて
  • 犬神ちゃんは3回くらい勝ったことがある
  • 犬神ってのは面白い怪異ですよ
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