「っ…ニトぉ…?」
「ん…まあ大丈夫だと思うよ」
曖昧に返事をしてニトはため息をついた。ド田舎で人も来ない家なので、インターフォンはおろか覗き穴も作っていないのだ。
ニトがゆっくり扉を開けると、そこには長身で若干目つきの悪いポニーテールの女性がいた。
「す、すみません…怪我をしてしまいまして。土地感もないですし、救急車を呼ぶ程かは分からなくて、その」
彼女は気まずそうに視線をそらした。ニトは彼女の背後で威嚇している番犬(狼)…こと斑に目線で伏せを指示した。
「どこを怪我なさったんですか?」
「足…です。右足」
確かに、彼女の右足には、鋭いものでできたようなぱっくり割れた傷があった。
「このくらいなら、僕がどうにかしましょう。あがってください」
「あ、ありがとうございます!」
ニトが彼女を家にあげると、ロマがとことこ寄ってきた。
「おともだちか?」
「いや?怪我人だよ」
彼女はロマを見留めると、顔を輝かせた。
「ロマ様!」