0

ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 19.チョウフウ ②

背中の真ん中辺りで切り揃られた長髪に、銀縁の丸メガネをかけた少女。
背丈はわたしより少し高い位で、彼女が羽織る鮮やかな紫色のスカジャンには蝶の刺繍が入っている。
この寿々谷において目立つその姿は、わたしの目を強く引き付けた。
「…え、誰」
「誰だって良いじゃない」
少女はそうわたしの言葉に答えると、わたしの隣へやって来て屋上の柵に寄りかかった。
「…それにしてもあなた、名前は?」
不意に少女がわたしの方を見て尋ねる。
急な事過ぎてわたしはへ?と答えることしかできなかった。
「あたしは蝶野 穂積(ちょうの ほづみ)」
ただの通りすがりよ、と少女は言って笑う。
「あなたは?」
穂積と名乗った少女がそう聞くので、わたしは恐る恐る不見崎 清花ですと名乗った。
「…そう、サヤカ」
良い名前じゃない、と穂積は微笑む。
「あたしの名前なんかよりずっと華があるわね」
ふふふと彼女は空を見上げつつ言った。

  • ハブ ア ウィル ―異能力者たち―
レスを書き込む

この書き込みにレスをつけるにはログインが必要です。