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ハブ ア ウィル ―異能力者たち― 19.チョウフウ ③

「それでサヤカ」
穂積が上を見上げたまま視線をこちらに向ける。
「ここから見える景色ってどう思う?」
突然の質問に、わたしは目をぱちくりさせる。
「景色…?」
「そう景色」
そう言って穂積はくるりとその場で半回転し、屋上の柵越しに下界を見下ろす。
わたしもつられて後ろを向く。
下界にはショッピングモールの入り口や近くの大きな通り、通り沿いの建物、と様々なものが見える。
「ここからの景色って、素晴らしいと思わない?」
彼女はそう言うが、わたしにはどうにもその意図が分からずはぁ、と答える。
穂積は続ける。
「この街の中心部で1番背が高くて大規模な建物だから、色々なものが見えるの」
人々の営みとか、ねと穂積はわたしに目を向ける。
「だから好きよ、この景色」
これからも大切にしていきたいものね、と穂積は笑った。
「…」
わたしは何なんだろうこの人、と不思議に思いながら彼女を見ていた。

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