「…」
あの子は何なのだろう、とわたしは思わず考え込む。
彼女は”ただの通りすがり”を名乗っていたが、普通通りがけの人に話しかけるだろうか。
そもそもの話、彼女は本当に”通りすがり”なのだろうか。
…実際、ミツルのように”通りすがり”と言いつつ意図的にわたしに絡んできた人もいるし。
彼女もまた、何か理由があってわたしに絡んできた可能性も否めない。
それに彼女もミツルと同じく異能力者かも…
「おい」
そこまで考えた所で不意にネロに話しかけられ、わたしはハッと顔を上げる。
「どうしたんだよ、そんな難しい顔して」
考え事か?とネロは不思議そうにこちらを見る。
「あ、あ、うーん」
そうだね、考え事、とわたしは慌てて答える。
ネロはふーんと答えたが、すぐに前を向いてこう言った。
「…黎が気にしてたぞ」
「え?」
わたしが思わず黎の方を見ると、黎は恥ずかしげに師郎の陰に隠れる。