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告白

嘘をついたのは初めてだった。
と言ってもそれを嘘と呼んだのは後になってのことだが、紛れもなくあれは僕の初めての嘘だ。
「そうだよ、嫌われ者だもん」
小学生になり空気を読むことを覚えろと親に言われた頃だった。何も知らない私は小学生とはそういうものだと信じていた。みんなそうしていて汚い笑い方も気に触る発言も全て空気なのだと、私はそう信じてしまった。
「お前、もう女子にフラれたんだってね」
「え、そうなの?ってかもう告るとか頭おかしいでしょ」
「えー、その子可哀想〜」
根も葉もない話だった。確かに同じマンションの女子と一緒に帰ることはあったが、あくまでも低学年ならではの集団下校でしかない。しかし大して友達のいない僕がどんなに否定しても誰も信じてはくれなかった。それどころか否定する毎に話は大きくなり、時間とともに噂は形を変えていった。
「フラれても諦めてないらしいよ」
「ストーカーじゃん」
言った本人は覚えたての言葉を使いたかっただけなのかもしれない。でもその標的にされた身からすれば溜まったものじゃない。幼いながらにその女子と帰るのを気まずいと感じてしまう。
「なんで違うって言わないの?」
ある日の帰り道、その女子は迷惑そうに言った。その子がストーカーだなんだと言われることはないだろうがそもそもが根も葉もない話だ、身に覚えのない擁護や知ったか顔に何かと迷惑はかかっていただろう。
「言ってるよ」
空気を読んだつもりでなるべく軽く言った。その子は唯一真実を知っている子で、どんなことであっても嘘をつきたくはなかった。
「じゃあなんで話が大きくなるの?」
その子が僕をを疑っていたのだと察した。その時は傷ついたが、今思えばあの場で言ってないと一言嘘を言うだけでよかっただろう。たったそれだけでその子は諦めてくれたはずだ。信じて疑われるより、諦めて責任を押し付けられる方がよっぽど楽だ。

to be continued..

  • 久しぶりに物語でも
  • 嘘をついたのは初めてだった
  • という本を読んで書いてみたくなりました
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