スマートフォンの画面と夜空を代わる代わる見る。
時刻は19時38分。
時間の進みがとてつもなく遅く感じられる。
「あーあ、どうしよう...。」
綺麗な夜空、画面に反射する街灯。
闇から浮かび上がる様に、独り。
黒い自転車と所在なさげに立っている。
「このまま帰ったら50分には着くな...。」
ゆっくり、ゆっくりと自転車を押して歩く。
ゆっくり、ゆっくり、時間をかけて歩いて、
鼻歌も歌う気が失せた頃。
「...!」
途中の公園に自転車を停め、ぶらんこに飛び乗る。
何時振りだろう。
懐かしい感覚が蘇る。
たった一つの違いは、
頭上にあるのは三日月、という事だ。
ふと、涙が溢れそうになって。
スマートフォンの画面に目を落とした。
時刻は19時50分。
時間の進みがとてつもなく早い。
神様がきっと。
ちょっと上等な魔法をかけてくれたに違いない。