叶絵は和湯姉から受け取ったガラスペンを構えエベルソルに相対したまま動きを止めていた。
(……そういえば、空中に絵を描くってどうやるの? あの魔法陣みたいなのとか……そもそも、あれを倒すって、何を描けば良いの……?)
叶絵が実際にインプットしたリプリゼントルの戦闘状況のサンプルは極めて少ない。そこに慣れ親しんだ現代科学とかけ離れた戦闘技術と、非日常へのパニックが加わり、思うように手が動かない。
ふと、エベルソルが一切自分たちに攻撃してこないことに気付き、敵の方を見る。その頭部には、先ほどのリプリゼントルの少女が胡坐をかいて3人を、否、叶絵を見下ろしていた。
「……あ、私のことは気にしなくて良いよ。君たちの戦いには手を出さないから」
にかっ、と笑い、少女が叶絵に言う。
「けどそのお姉さんもひどいよねぇ。何も知らない女の子を無理くり戦場に引きずり出すなんて……君が何の才能も無い無産なら詰んでたよ、ねー?」
蛾のエベルソルに同意を促すが、エベルソルは何も反応せず脚をばたつかせるだけであった。
「……まぁ、せっかく才能と道具、両方あるんだ。頑張れ若者、くりえいてぃびてぃに任せて好きに暴れな」
少女にサムズアップを示され、叶絵は一度瞑目して深呼吸をしてから、再び目を開いた。
ガラスペンを目の前の虚空に置く。ペン先の溝を無から生み出されたインキが満たし、目の前に同心円と曲線が組み合わさったような魔法陣が、殆ど無意識的に描き出された。
意を決してそれを通り抜けると、寝間着姿から一変してピンクと白のパステルチックなワンピース風の衣装を纏った姿に変身していた。
更にガラスペンをエベルソルに向けると、空間を暗闇に塗り替えるようにどす黒いインキの奔流が周囲を覆い尽くす。
「うっわマガマガしー。どんな生き方してたら『可愛い』と『邪悪』があの同居の仕方するんだろうね? まあ新入りちゃんの『芸術』、見せてもらおうじゃないの」
けらけらと笑いながら、少女はエベルソルから飛び退いた。
ついに覚醒致しましたか。
やっぱり他人に書いてもらうと想像の斜め上を行くものができちゃうので面白いですね。
…それにしても叶絵の得意分野をサイコロで決めたとか、ナニガシさんらしいわね(あとこの続きを自分に書けるか心配になってきた、まぁ書くんだけども)。
ダイスによる占いの結果、叶絵さんの得意ジャンルは『ポップなアニメ調の人物(部分)』『ダークなアニメ調の背景・風景』ということになりました。まずは環境から自分好みに変えていくつもりみたいです。あと多分この子、女の子の胸像画ばっかり描いてると思う(厳正な出目による偏見)。
「ポップなアニメ調の人物」と「ダークなアニメ調の背景・風景」って…ま◯マギ?
自分の中ではそれに当てはまる作品といえばシャ◯ト系アニメなんだけどな…
ちょっと下調べでもするか。
叶絵さんの背景から敢えて考察するなら、自己肯定感の低さから「優れた存在・理想の自分」が表出されたのが「ポップなアニメ調の人物」なんじゃないですかね。比較されて「自分は劣っている」という固定観念が植え付けられたせいでそこに到達するイメージが自分の中に無いから、全身画は描けない。
それに対して、「ダークなアニメ調の背景・風景」は自分を「劣っている存在」と決めつけた環境へのストレスを暗示していて、それが無意識に表出しているんじゃないかと。
多分ね? 確証はないよ? ダイスの出目と設定からこじつけただけなので。
ちなみにこんな感じのダイス表で2回振った。
得意ジャンル(1d6)
1:ポップなアニメ調 2:パステルな写実風 3:コミカルなトゥーン調
4:カワイイデフォルメ調 5:ダークなアニメ調 6:抽象画
得意モチーフ(1d6)
1:人物(部分) 2:人物(全体) 3:動植物
4:無生物 5:背景・風景 6:エフェクト
ダイスでの決定だったんですね!思ったよりダークめな娘だったんだなぁ。
薄紫色の子がクリエイティビティをひらがなで言ってるの可愛いですね、なんか背低そう(ド偏見)
なるほど、あの設定からそういう解釈を…
ちなみにですが、薄紫ちゃんは自分の中では高身長なんだよなぁ…
せっかくならイラストでも描いてみようか。