「別に俺はそういうつもりじゃ…」
しかし露夏は何かに気付いたのか、ははーんと腕を組んだ。
「お前まさかかすみにバレンタインのチョコを渡したいんだな〜」
「い、いや、そういうことじゃねーし!」
ナツィはそう言って否定しようとするが、露夏はナツィの肩を叩きながらハハハと笑う。
「いいじゃねーか、お前、好きな奴にチョコあげるなんて、意外と可愛い所あるじゃねぇか」
露夏は1人笑いを堪えていたが、ナツィは…可愛くねぇしと口を尖らせていた。
「別にいつも世話になってるからなんか作ってあげようと思ってるだけで」
好きとかそういうのじゃ…とナツィはそっぽを向くが、露夏は相変わらず笑っている。
「あ、そうだ、せっかくならピスケスに手伝ってもらおうぜ」
アイツ意外と料理とかできるからさと露夏は笑いながら言う。
「ピスケスん家でやろうぜ」
露夏はそう提案するが、ナツィはムスッとした顔で先程見ていた本を手に取った。
「嫌だね」
アイツん家なんてとナツィは吐き捨てると、書店のレジに向かった。
「あ、ちょっと待てよ〜」
露夏も慌ててその後を追った。
〈赤黒造物書店 おわり〉