鎌鼬が種枚に追いついた頃、彼女は既にパーカーの1枚目を腰に巻き、今しがた狩ったばかりの怪異に齧りついているところだった。
「ン、遅かったなァ馬鹿息子よ」
「師匠が速過ぎるだけですから。っつーかなんで風の速さで移動できる俺より速いンスか」
「修行が足りてねーなー……まだまだ作業は残ってるんだぜィ?」
怪異の残骸を投げ捨て、種枚は再び駆け出した。
それを追おうとして異能を発動した鎌鼬の身体を、青白い無数の手がすり抜けた。
(ッ⁉ 風になってなきゃ危なかった……)
「おー、そっちに居たか!」
走り去っていたはずの種枚が瞬間移動と見紛うほどの速度で引き返し、腕の数本を勢いのままに引きちぎった。
「次の獲物はコイツだなァ!」
興奮したように吼え、回転しながら腕の群れに飛び込み、それらを1本残らず切り飛ばしてしまった。
「やー……やっぱすげえッスね。師匠の必殺技」
異能を解除して地面に下りてきた鎌鼬が、腕の残骸を見て苦笑しながら言った。
「シシシ、そうだろ。化け物共とやり合うために、私の知恵と身体能力の全てを注ぎ込んで考え出した技の数々だぜィ? すごくなきゃ困る」
鋭い牙を剥き出しにして笑い、種枚は答えた。