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視える世界を超えて エピソード6:月夜 その⑤

とある自動車用信号機の上から種枚と鎌鼬の二人が見下ろす先、そこには体高約3m、その倍ほどの体長を持つ巨大な肉塊のような人外存在が蠢いていた。
「あっひゃはははははは! 気っ持ち悪いヤツも居たもんだ!」
「あれ、何なんでしょう……」
「知ィーらね。世の生き物全部に名前がついてるわけじゃ無いんだ。名無しのオバケで十分さ」
そう言って、種枚は怪異の進む先に飛び降りた。
肉塊怪異は突如目の前に現れた種枚を気にするそぶりも見せず、勢いそのままに進み続ける。
「こいつゥ……良い度胸してるじゃねェか」
ニタリと笑い、上体を大きく前に傾ける。両腕は完全に脱力して垂れるままに任せ、左足を大きく引き、爪先はほぼ真横に向けた状態で踏み込み、右足もアスファルトに足跡が残るほど強く沈み込ませる。
「ぶっ飛べ、【疾爪】」
踏み切ろうとしたその瞬間。
「待て!」
背後から急に聞こえてきた声に身体が硬直し、しかし勢いは殺しきれず、その場で大きく転倒してしまった。

  • 視える世界を超えて
  • 何か短ェな?
  • 技名が口に出る程度にはアガってたのに……
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