少女は肉塊怪異に斬りかかっては飛び退いて距離を取る、ヒット・アンド・アウェイの手法で戦い続けていた。しかし肉塊に目立ったダメージは全く与えられず、その足取りもまた、全く衰えない。
「……あの子、刀の使い方が下手だねェ」
「え、師匠剣術とかやってたンスか?」
種枚の呟きに、鎌鼬が問い返す。
「な訳無いだろ。包丁でもカッターナイフでも、刃物を持ったことがある奴なら分かる程度のことさ」
「……いや分かんないです」
「しょうがない奴め。良いか? 刃物ってのは何でも、正しく刃を入れて引かなくっちゃあ切れないモノなんだ。家に帰ったら試してみろ、包丁の刃に手ェ押し付けるだけなら、別に切れやしないんだぜ」
一度口を噤み、少女に目を向ける。少女は刀を杖代わりに、怪異の前に膝をついていた。
「あらら、大分しんどそうじゃあないか」
「助けに入った方が良いんじゃ?」
「……いやァ?」
肉塊怪異が少女を押し潰そうとしたその時、少女はどうにか立ち上がり、刀の刃を怪異にぶつけてから転がるように後退った。