「⁈」
穂積は驚いて目を丸くする。
彼女の目の前には紺色のパーカーを目深に被った少年が立っていた。
「…あんた」
穂積がそう言うと、彼は冷たい目を穂積に向けた。
「お前、同じ学校の…」
黎がそう呟くと、穂積はそうねと返す。
「たまに廊下で会うわね」
でもそれがどうしたの?と穂積は首を傾げる。
「いや、それ以上は何も」
黎がそう言ってそっぽを向くと、まぁ良いじゃないのと師郎が彼の肩に手を置く。
「知り合いって事は何かの拍子に役立つかもしれないし」
な?と師郎は黎の顔を覗き込む。
黎はそっぽを向いたままだった。
「ま、良いわ」
それじゃああたしは…と穂積は十字路の左に伸びる道へ向かおうとする。
しかし彼女はぴたと足を止めた。