理宇は持っていた2本の棒を地面に放り、ガラスペンを取り出した。輝くインキを無造作に垂らし、形成された大きなインキ溜まりの中に両手を突っ込む。一瞬待って引き抜いた両手には、インキと同様に輝く1双のガントレットが履かれていた。
「これだからバチは駄目なんだ。ちょっとラグができちゃうから。素手なら最速だ…………仕返ししてやる!」
口に溜まった血を吐き捨て、理宇は再びエベルソルに向かった。
敵から繰り出された3本の腕のうち2本を沈み込むように躱し、1本を手の甲で受け流し、空いた片手で顔面を殴りつけた。
続けて側頭を狙うエベルソルの攻撃を後退りながら躱し、再び始まった連撃もガントレットで防ぎ、受け流し躱していく。
エベルソルは連撃を続けていたが、突如その手を止め、再び背中を丸め身体を震わせた。
(! また腕を増やす気か!)
変化が起きる前に、理宇は素早くエベルソルの頭頂を殴り付け、地面に沈める。更にタマモの放った大型光弾2発が、腕型器官1対を吹き飛ばした。
「オーケイこのサイズが有効打な。160までなら上げてやる」
「タマモ先輩! 了解です!」
タマモは大型光弾を生成し、空中に十数発待機させてから射撃を開始した。正確に等間隔で発射しつつ、新たな弾丸を生成する。それを繰り返しながら、エベルソルの腕を重点的に狙い、理宇に向かう攻撃の数を減らしていく。