昼下がり、とある小さな喫茶店の店内にて。
カウンターからエプロン姿のコドモがティーセットを載せたお盆を持ち上げる。
そしてそれを持ったまま窓際のテーブルに向かった。
「ご注文の…」
エプロン姿のコドモことかすみがそう言いつつティーセットをテーブルの上に置いた所で、目の前のイスに座る明るい茶髪の少女がこう言った。
「ここ、いい店じゃない」
突然の言葉にかすみはへ?と拍子抜けする。
「内装といい、雰囲気といい、わたしは好きよ」
少女はそう言うが、かすみははぁ、と返すだけだ。
「あらあなた、ここの店員さんなのに良さが分からないって言うの?」
もったいないわね、と少女は溢す。
「何年ここで働いてるの?」
少女に尋ねられ、かすみはふと宙を見上げる。
「えーと…1年半、くらい?」
かすみは首を傾げながら言った。
「ふーん」
結構長いじゃない、と少女はティーカップに紅茶を注ぎながら呟く。
「まぁ、自分はアルバイトじゃなくてマスターのお手伝いみたいなものだから…」
あんまりここの良さとか考えたことなかったなぁ、とかすみは笑う。
「そう」
少女は窓の外を見ながら頷いた。
するとここで店内のカウンターの向こうに座る店主の老人がかすみの名を呼んだ。
はい?とかすみが振り向くと、店主は2階のあの子たちが呼んでる、と店の奥を指さした。
「あ、分かりました〜」
かすみはそう言うと、じゃあ自分はこれでと少女に一礼してカウンターの方に向かった。