人々で混み合う市の通りを帽子を目深に被った人物が走っていく。道行く人々は突然人混みをかき分けていく人物に驚きながらそれを避けたり、ぶつかってしまったりする。上空からの天使の追跡を逃れるように逃げていくその人物はいつの間にか人気のない街の外れまで来ていた。
「…」
帽子の人物は周囲に人がいないことを確認すると、ホッとしたように近くの壁に寄りかかる。しかし突然、ねぇと話しかけられて帽子の人物はビクッと飛び跳ねる。
帽子の人物が声のする方を見ると、地上では中々見られないような白い外套を着て頭巾を目深に被った人物が立っていた。
「やぁ」
「て、テメェ」
何者だと帽子の人物は後ずさる。白い外套の人物はふふふと笑みを浮かべる。
「ぼくは“サタン”」
見ての通りただの堕天使、と白い外套の人物は右手を胸に当てる。
「なんだよ」
一体堕天使サマが何の用、と帽子の人物が言いかけるとサタンは帽子の人物の口に右の人差し指を突きつける。
「今からぼくが君を助けてあげよう」
「は?」
なんで俺がテメェなんかに…と帽子の人物が言いかけた所で不意に上空から声が聞こえた。
「見つけたぞ‼︎」
この悪魔め!と3人の天使が舞い降りてくる。
「うぉやっべ!」
帽子の人物はそう言って駆け出した。サタンはちょっと待ってよ〜と引き留めようとしたが、おいと後ろから声をかけられて振り向く。そこには上空から舞い降りてきた天使たちがいた。
「そこのお前、アイツを知っているのか」
白い制服を着た天使の1人がそう尋ねる。サタンはあーえっとね〜とにやにやする。