言葉を飲み込んで沈黙を破った。
「残念だが平行線だな」
「だからこうして足繁く通う価値がある」
そう言いきると、彼は皮肉がちに笑った。
「物好きだな」
レイは呆れたように歩き出した。
「お前に言われたくはない」
ムーラがレイの後ろ姿に向かって言うがレイは振り返ることなくそのまま馬車の中へ消えていった。
「ムーラ…お前はなぜ…あいつの後を追う?」
馬車の窓からは戦火の跡と追いやられた人間の泥臭い作業の姿が見えた。
『惨く醜いな、これが辞め方を失った物の末路だ。だからお前は始めるな、お前の戦争を』
「父の言葉なんか…」
その景色の凄惨さにレイは先のムーラとの会話と父と最後に交わした会話が重なった。
「…イさん、レイさん!」
そんな考え事をしている間に到着したようで馬を走らせていた付き人のケイが客車の扉を開けた。
「あ、すまない」
「珍しいですね、いつもは着いたらすぐに降りるのに」
「ストーカーを躱すのに疲れてるだけさ」
そう言ってレイは少し笑って馬車を降り、目的地であるファーム(人間の居住地)の出口の扉を通った。